🏷️ 連載:ハレとケ暮らし 第1回
はじめに
「ハレとケ」という言葉は、民俗学者・柳田國男が『遠野物語』(1910)をはじめとする著作で整理した、日本人の暮らし方を表すキーコンセプトです。ハレ=特別な日、ケ=普段の日という対比だけでなく、稲作を軸とした生活サイクルのなかで “振り子” のように行き来するリズムそのものを指していました。
私たち「ハレとケ暮らし」というブランドは、この日本人が大切にしてきた本来のリズムを現代にアップデートしたい。そんな想いから生まれています。
1. ハレとケは、2つで1セット
ハレ(晴・霽) | ケ(褻) | |
---|---|---|
意味 | 非日常/祝祭/ごちそう | 日常/労働/質素 |
具体例 | 正月・盆・祭り・婚礼 | 毎日の家事・畑仕事・一汁一菜 |
ハレの日は「晴れ着」をまとい、赤飯や餅、お肉、お酒など、豪華な料理が並びます。
ケの日は、発酵食品や雑穀、野菜を中心に、心身を整えるご飯が中心。一汁一菜のスタイルが基本で、漬物や小鉢などをいただきます。
ケの日の日常があるからこそ、ハレの日が輝き、生活にメリハリと高揚感が生まれると柳田は述べています。
2. 『遠野物語』が教えてくれるハレの情景
遠野(岩手)では、田植えや稲刈りといったケの季節労働の合間に、小正月の餅搗きや夏の雨風祭りなどのハレ行事が必ず挟まれていました。人びとは酒を酌み交わし、神さまにごちそうを供えて感謝し、「非日常」をみんなで楽しみました。
農作業で疲れた心身を“祝祭”で解放し、また日常へ戻る――この循環が集落の結束と身体の回復装置になっていたのです。
3. 「ケの日」の持つ静かなパワー
一汁一菜+発酵食:腸を整え、内臓を休める
家仕事・畑仕事:軽い有酸素運動と無心で取り組む“禅の時間”
早寝早起き:日の出とともに働き、日没で休む
派手さはありませんが、ケは“地ならし”の期間。ハレで使ったエネルギーや栄養をリセットし、次のハレに向けて心身をチャージします。
4. ハレとケの“振り子効果”
ハレ(興奮) …… アクセル全開で気分を上げる
ケ(回復) …… ブレーキを踏んでクールダウン
再ハレ …… 充電が済み、また高揚を楽しめる
このリズムが自律神経のオン・オフを整え、栄養の過不足を平均化し、コミュニティの結束を深めていました。ハレとケはセットで回して初めて力を発揮します。
5. なぜ今、見直す必要があるのか
江戸の開国、明治の文明開化、戦後の欧米化という3段階の変化を通じた近代化とともに、ハレとケの境目は薄れ、「毎日がハレ」のような状態が進んでいます。コンビニの24時間営業、高カロリー・高糖質・高脂質な食事、日常的な飲酒、SNS・・・
ハレの刺激は増えたのに、回復のケが不足しているのが現代です。柳田は近代化が始まった明治期にその兆候を憂い、「ハレの日常化」を問題視していました。
だからこそ私たちは、ケを意識的に取り戻し、ハレをほんとうの“ごちそう”に戻す暮らし方を提案したいのです。
6. 今日からできる“小さなハレとケ習慣”
ごはんを一汁一菜に:具だくさん味噌汁+ご飯でOK
休日はハレを計画:家族や仲間と「特別な食卓」を楽しむ
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Brand Message
「ハレとケ暮らし」は、日本人が本来持っていたハレとケのリズムを、現代のライフスタイルに合わせて再設計するプロジェクトです。特別と日常を上手に切り替えることで、毎日をもっと豊かで健やかに。全6回の連載で、そのヒントを一緒に探っていきましょう。
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